ひとつのこい
片寄りに傾斜した慕情は静かに失せにけり
夢の音が響く。
ガラス細工の砕けた欠片は、小さく泣いて沈み込む。
伏せている影。
まるで視えなくする事を見せたいが為。
寄り添いは拒み、言葉は空を切る。
どれだけの事なのか。
結び固めた口唇は戦慄き、表情は砕ける寸前。
心象を具現させず、ただ両の足を踏み耐える。
大小つかない諭旨がある。
始まり、寄り添い、違和、指摘、相対、別離。
その一音が自身の花弁を千切り、その一音が相手に確信を付与する。
構わない、と。
それでも見て欲しかった、小さな自分を。
それでも始められなかった、小さな自分が。
頬伝い滂沱と溢れた憐憫の光は美しく。
滑稽に伏して別離へ進む夢はそのままに。
静かに、事は静かに浸食する。
息遣いは吐息で、胸を握る両の手は情熱で。
やがて、が来るのを待つのだろう。
緩やかな穏やかさが辺りを包むのを待つのだろう。
いつか来る。
その瞬間を得るに至る過程を思い、吐息は嘆息と知る。
そうして慕情は失せにけり。
一つ。
残る慕情に艶めく色味が華咲くならば、今一度新たな慕情は生まれ出づる。
ささやいた夢の音は、一つ先を照らしている。
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