恋慕の常

 花開く。
 蕾を知るべくもなく、唐突に咲き乱れる。
 花弁の一片ごとに艶めきを与え、瑞々しい彩りを添える。

 理由は無く、その必要も無い。
 煌めく瞳で真中に捉え、彩る表情に心を震わせる。

 心に蓄える。
 細切れに積み重なる思い出を繋ぎ合わせて、一つの物語に。

 夢からも飛び火する。
 理想を願うばかりに具現する完全が、また一つ積み重なる。

 想いを重ね着し続けた偶像。
 そうして、やがて自重に耐えかねる。

 映る姿はそのままに、描く姿は空を見て。
 静かに理解する。
 見ていたのは何だったのか。

 日常に戻る。
 蔑ろにした今を慈しむように、周囲から自身へ目を向ける。

 そうしてまた一つ。
 輝く瞳が自身に向けられていることを、知ることは無い。

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