しょうせつ

 降り浸す音がする。
 地表に衝突して霧散する無情の声。

 聴きながら、静かに目を閉じる。
 幾重にも落下を繰り返すその音は旋律を奏でる。

 遠雷が小さく轟き、林を疾走する風は甲高く。
 野鳥の慌ただしい羽ばたきは、小さきモノの葉踏み音を生み出す。
 次々絡み合う音色は奏で合い、とけ合う。

 ふと、全ての音が闇に覆われる。
 張りつめた声無き音色が耳朶に触れ、物語の転換を促す。

 静かに。
 ただ静かに、続きに耳を澄ませる。

 降り当てる音がする。
 地表に張り当たる幼氷の笑い声。

 ちいさな飛礫は中空を。
 ちいさな結晶は中空に。

 空に踊る夢細工。
 瞬く星に相対し、深まる闇夜に華ひらく。

 ひとひらの。
 時節の移ろいを表して、景色は揺らぐ。

 次季を目指す道程は遠く。
 踏みしめる結晶は、冬を夢見て震えた。
Topへ戻る inserted by FC2 system