たいせつ

 鈍色の空が唄う。
 白銀の音色は、軽んじて舞い踊る。

 湖畔に佇む鳥。
 視線の先には湖を跳ねる小鳥。
 薄氷は大地と繋がり、限られた歩路となる。

 淡く透き通る湖氷は、それを見下ろす山々を滲むように映す。
 麓から頂へ伸びる真白を衣に。
 裾を白踏みさせるように。
 延々と降り注ぐ夢細工は、時折笑って空を揺する。

 踏み出した一歩は湖畔の鳥。
 踏みしめた大地は幼い氷柱。

 乾き鳴いた足音。
 動きを止めて、時が止まる。

 悠久の停滞は、自身を背景に溶かしてゆく。
 背に乗せた白色に、足を埋める白色に。

 時季半ば。
 折り返すには幼く、降り続く姿はこれからの到来を予感させる。

 白銀の音色は重厚に。
 鈍色の空は豪奢な指揮をとる。

 荘厳であらんとする儚さも。
 絢爛に咽ぶ素朴さも。

 全ては白にかき消える。
 夢見た冬は、今ここにある。
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